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最近みた演劇、うろ覚えの備忘録

バストリオ「TONTO」は夏目漱石夢十夜」から着想を得たという作品。「こんな夢を見た」という語りから、10編のエピソードの断片が紡がれる。全く予備知識もなく、それも初めて観た劇団だったので全体像を掴むはなかなか難しかったことは事実。でも複雑な舞台装置や音楽的な要素を取り入れた表現がすごく好みだった。劇中なんども客席後方にある会場入り口のドアを開け放つ。役者が客席の中央を縫って駆け抜けるようにそこを出入りする。終わりに用意されたトークで、バストリオの主宰の方が今回の劇のテーマ(?)のひとつとして「遠くのことに思いを馳せる」というものを挙げていた。劇中、開かれた扉の向こうから通行人の話し声、車が通る音などの日常の音、演劇の外にある音が会場内に入り込んでくるのがすごく心地よかった。

 

日常が入り込んでくるという点でいえば、小田尚稔「聖地巡礼」もとてもよかった。こちらは女性2人のみによる芝居。大学時代に同じ学生寮で暮らしていた「風間」の結婚式に向かうため、「織田さん」(この漢字だった気がする)は東京から青森へ。が旅は思わぬ方向へと進んでいき、織田さんは恐山へと向かうこととなる。この「聖地巡礼」は劇場というより、絵の展覧会でも行われそうなこじんまりとしたアートスペースで上演された。その建物の通りに面した部分はガラス張りになっており、外から簡単に室内の様子がうかがえるようになっている。ライヴでも演劇でも会場の入り口側が客席になっていることがほとんどだと思うのだが、今回はその逆で、舞台は通りに面したそのガラス、つまり外の通りの風景を背景としていた。ただの町の景色が舞台装置みたいに見えた。

この劇では登場する2人が舞台上で言葉を交わすことはほとんどないし、もっと言えば舞台上に彼女たちが揃うこともほぼない。基本的に1人がステージに現れると、もう1人は上手にある会場の外へ通じるドアから退場する。そして入れ替わりで登場する際には、ガラス越しに見える会場の目の前を通りがかった普通の通行人らと同じように、外の通りを歩いて会場入り口から再び物語に戻る。その演出がすごくよかった。

話は1人が観客に向かってそのときの思い出を語りかけるような形で展開し、主に織田さんが経験した恐山への旅が劇の軸となっている。彼女は「死者への想いを預かる場所」である恐山で目にした人々(狂ったようにひたすら手を清め続ける人、震災で家族を亡くした若い男性などなど)の様子を客席に語りかける。そこで見た人物の所作が彼女の語りによって描きだされる。一方で風間1人によるパートでは、彼女の記憶のなかにある織田さんについての思い出が語られる。婚約者との初デートのエピソードへと脱線したりしながら。

劇中に人生を旅になぞらえる言葉がでてきた。織田さんは恐山へ旅をする。そこで目にした人々について話し、その様子からその人の人生に思いを馳せる。そして風間は人生のなかで出会った織田さんのことを、別の出来事へと時折脱線しながらも思い出す。そしてそのステージの奥にあるガラスは、舞台を超えた外にある現実の風景を映し出していて、たくさんの人が通りをすれ違っていく。なんだかうまくまとまらないけど、その構図というか構造みたいなものがすごく心に残って、人生ってそういうものだなーとなんとなく考えた。